交番の警察官に拳銃は必要なのか?

一昨日(6月16日)に大阪で発生した警察官の拳銃強奪事件。昨日、容疑者がスピード逮捕されたのは喜ばしいことだが、ここ数年、交番警察官の拳銃が強奪される事件が多発し、それによる被害者が出る事件も発生している(昨年の富山事件など)ことを考慮すると、そもそも、交番のおまわりさんが拳銃を常時携帯する必要性があるのか、という疑問が湧いてくる。

アメリカのように庶民でも拳銃を所持できる社会なら、警察官の自己防衛のために必要だ、という論理は成り立つが、日本ではそもそも一般人は拳銃を所持できない。暴力団が密輸でもしなければ、警察官や自衛隊関係以外の人が銃を手に入れることは極めて困難な社会である。そのような社会において、町中のインフォメーション的な役割が強いおまわりさんが、常時、交番の前で拳銃を持って立っている必要がほんとにあるのか。

警察官が拳銃等の武器を使用できる場合については、警察官職務執行法(第7条)に規定がある。

第七条警察官は、犯人の逮捕若しくは逃走の防止、自己若しくは他人に対する防護又は公務執行に対する抵抗の抑止のため必要であると認める相当な理由のある場合においては、その事態に応じ合理的に必要と判断される限度において、武器を使用することができる。但し、刑法(明治四十年法律第四十五号)第三十六条(正当防衛)若しくは同法第三十七条(緊急避難)に該当する場合又は左の各号の一に該当する場合を除いては、人に危害を与えてはならない。
死刑又は無期若しくは長期三年以上の懲役若しくは禁こにあたる兇悪な罪を現に犯し、若しくは既に犯したと疑うに足りる充分な理由のある者がその者に対する警察官の職務の執行に対して抵抗し、若しくは逃亡しようとするとき又は第三者がその者を逃がそうとして警察官に抵抗するとき、これを防ぎ、又は逮捕するために他に手段がないと警察官において信ずるに足りる相当な理由のある場合。
逮捕状により逮捕する際又は勾引状若しくは勾留状を執行する際その本人がその者に対する警察官の職務の執行に対して抵抗し、若しくは逃亡しようとするとき又は第三者がその者を逃がそうとして警察官に抵抗するとき、これを防ぎ、又は逮捕するために他に手段がないと警察官において信ずるに足りる相当な理由のある場合。

要するに警察官自身の正当防衛や犯人の逃走防止、つまり、「止まれー! 止まらんと撃つぞー! と言うために必要だ、という論理なのだが、戦後の混乱期のように強盗やひったくりが多発した時代ならいざ知らず、今どき、天才バカボンに出てくるおまわりさんのように拳銃を打ちまくって泥棒を追う、などという事態が考えられるのか。

警察官の拳銃は、上記のような正当な目的のための武器になると同時に、今回の事件や昨年の富山の事件のように盗まれれば市民に対する凶器にもなる。日本のように拳銃の入手が難しい国では、拳銃を入手しようとする者にとって交番のおまわりさんから奪うのが最も容易な手段である。従って、市民を守る武器としての正の期待効用と市民に対する凶器として使われる負のリスクを量りにかけて比較する必要があるだろう。最も単純な分析法は、交番のおまわりさんが携帯する拳銃によって助かった人や捕まった犯人が一定期間に何人いるのか、逆に、その拳銃が奪われることによって生命に危険が及んだ人が一定期間に何人いるのか、を比較することである。この2つの数字を比較するだけでも、交番のおまわりさんが拳銃を携帯することが正当なのか否かがある程度評価できる。

イギリス・スコットランドヤードの制服警察官は、拳銃を常時携帯しているわけではない。スコットランドヤードの他にも警察官が丸腰の国は、世界に19カ国あるという(http://tmbi-joho.com/2018/03/07/unarmedcops/より)。

警察官に武器が不要だとは言わないが、通常は金庫で厳重に保管し、必要な場合にのみそこから出して携行するという方式でも警察官職務執行法の目的は十分達成しうるのではないだろうか。

 

 

 

 

 

 

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