旅客船沈没事故・・・韓国もやはり最大の問題点はインシデントマネジメント

韓国で発生した旅客船セウォル号沈没事故。200人近い犠牲者が出ており、遺族の悲しみを思うと言葉が出ない。心より哀悼の意を表明したい。

ところで、いななる事故でもそれが防止できなかったのかというその予防・減災措置上の問題点(Prevention/Mitigation)、物事は100%防止するということは不可能なので起こってしまうことも想定して準備する準備措置上の問題点(Preparedness)、そして起こってしまったら被害を最小限度に押さえるという対応措置上の問題点(Response)に必ず分かれる。

今回の事故では、各種の報道などから次の問題点が指摘できる。

1.予防・減災措置上の問題点: 船舶改造によって重心が上がっていたこと、過積載、急旋回など。そのような改造や積載を認めてしまった行政機関の問題。船舶を急旋回させた操船者の操船上の問題。

2.準備措置上の問題点: 10日に1度行わなければならない非常事態への対応訓練を行わなかった船会社の問題。それを船舶検査などで把握し改善指導できなかった行政機関の問題。

3.対応措置上の問題点: 船長が先に逃げてしまったこと、韓国海洋警察庁などによる捜索救助(SAR)活動の初動措置の問題、朴大統領を筆頭とする政府全体の大混乱など。

重心を上げたり、過積載することは船舶転覆に対する脆弱性を上げ、事故を発生させる確率を上げる行為であり、容認できない。なぜ、こんな改造や過積載が見逃されたのか。船会社も問題だが、行政側の検査も節穴だらけだったということになる。旅客船では多くの人が乗っているので貨物船などに比べ避難訓練などは非常に重要だが、まともにやっていなかったのか。この規模の船舶は必ず国際安全管理規則(ISMコード)に従って船会社は安全管理体制を構築し、適合証書を持っているはずだが、証書を持っていたとすれば詐欺みたいなものだし、よく確認をせずに証書を発行したとすれば発行した検査機関なり行政の責任も重大だ。

そして一番問題なのが船内に取り残されていたであろう人々を救出するための対応措置が十分とられていなかった点である。船舶が完全に沈没するまでにはかなりの時間があったはず。この段階で船底に穴を空け、そこから救助するなどという技術は日本などには古くからあり、そのための特殊救難隊なども日本の海上保安庁にはある。韓国にそのような技術があるのかないのかは知らないが、日本からは当然支援をオファーしていたはずであり、政治的問題からか韓国の現場が面倒臭がったからかはわからないがこれを受け入れなかった韓国側の措置は極めて問題である。米軍も支援をオファーしていたようだが、それも十分生かされてはいないだろう。このような大災害ではメンツもへったくれもない。世界中から可能な限り最先端の技術や知見を集めて救助するしかない。外国からの支援は言葉の問題などもあり、現場がいやがるというのもよくある話だが、後から考えてみればそれは言い訳にしかならないだろう。謙虚さが足らないとそのツケは巨大なものになるという最悪の事例だろう。

パク大統領は事故直後に現場視察に赴いていたが、あれも極めて素人の発想である。大統領が現場に行って何ができるのか? 邪魔なだけである。大統領が行けば現場は大統領の面倒もみなければならなくなる。これは百害あって一利なしである。日本でも福島第一原発事故時に当時の菅総理大臣が現場視察にのこのこと赴いていたが、あれが如何に現場対応している職員にとって迷惑であったことか。パク大統領の現場視察は菅総理大臣の原発視察に匹敵する愚かな行動である。大統領の仕事は現場を指揮することではない。現場を支援することである。言い換えれば、世界中からありとあらゆる支援をかき集めることである。現場の救助指揮は現場指揮官に全面的にまかせなければならない。

なお、このようなインシデントマネジメントと呼ばれる分野は、日本とてもそれほど確立されているわけではない。大災害になればなるほど、責任回避が最大の行動要因になり、政府全体で大混乱を起こすというのは日本でも毎度発生していることである。韓国政府はジタバタ政府などと韓国国内のマスコミから批判されているが、他人ごとではないと思っている。

 

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  1. ピンバック: 災害時における責任の在り方について | SAFETYON

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