リスク評価手法

参考文献:米国沿岸警備隊(USCG) RBDM Guidelines

手法の名称 概要 使用可能な分野
パレート分析

(Pareto Analysis)

過去の多数のデータの中から、最も重要だと思われる要素を発見するための順位付け手法。この手法は、80-20ルール、つまり、問題の80%は、数多くの原因の中の20%のものよって引き起こされているという一般原則を活用し、その20%の原因を発見するための手法である。例えば、下記のように事故の発生件数の高い要因から左に並べ、件数を左から右へ積算したものの全体に占める割合を棒グラフにすると、見張り不十分と居眠りだけで事故全体の80パーセントを引き起こしていることがわかる。

・     過去のデータが蓄積されている場合には、どのようなタイプのシステム、プロセス、活動の分析にも有効である。

・     通常は、問題を引き起こしている最大の要因を発見し、後ほど、更に詳細なリスクアセスメントを行うために用いる。

チェックリスト分析

(Checklist Analysis)

ガイドラインが存在する場合に、適宜の様式のチェックリストを作成し、評価する手法である。

《コンピューターのデータ保護についてのチェックリスト例》

質 問 対応策
データのバックアップは行われているか No 1日に1度、自動的にバックアップさせる。
ウィルス対策は? No ウィルスソフトを常駐させる。
盗聴対策は? No 暗号化ソフト導入

 

・     ベストプラクティス等、最適な事故の予防策が存在している場合には、どのようなタイプのシステム、プロセス、活動の分析にも有効である。

・     FMEAやHAZOP等の精度の高い分析手法が使用できない場合に最もよく使用される。

・     What-if分析と同時に使用すると、更に深く分析し、創造的思考を高めることができる。

・     エラー分析チェックリストは、人間の信頼性分析に使用される特殊なリストである。

・     根要因図は、根源的な原因を発見するための特別なチェックリスト図面である。

相対的格付け/危険指標

(Relative Ranking/Risk

Indexing)

船舶、沿岸施設、港、水路等の特徴を分解して数値化し、リスク指標を計算して、相対的に比較するための手法。例えば、各評価軸(水深、湾口等)ごとに適当に尺度を決め、5段階評価した結果を合計するとC港のリスクが最も高いという結果が得られる。

水深 湾口 交通量 障害物 危険度
A港 12
B港 10
C港 15

 

・     優先的立入検査をすべき、船舶を決める場合等に使用できる。

・     適切な得点表が存在し、相対的な優先順位を決定する必要がある場合に有効である。

予備的リスク分析

(Preliminary Risk

Analysis(PrRA))

事故のシナリオ別にリスク(危険度)を評価する手法である。専門家の参加が欠かせない。想定される事故の最大の要因を明らかにすると同時に、対応策も明らかにする。

事故 最大要因 確率 危険度 正確性 防護手段 勧告
結果

結果2 結果1
労働者が重傷を負う クレーンから物がおちる

運送中の転倒

スリップ事故

0.3 0.4 0.3 資格の取得促進

安全マニュアル配布

疲労ガイドラインの作成を検討すべき

 

・     港内の総合的なリスクアセスメント等、多種多様なリスクを評価する場合に有効である。
変更分析(Change Analysis) システムのレイアウト変更、運用手順の変更、政策の変更等、これまでと違う状況になった場合にリスクにどのような変化が生じるかを分析する手法である。予備的リスク分析と同時に使うと更に良い。

事故 通常と違う状態 確率 危険度 正確性
結果3 結果

結果1
転覆 帆船の来航

交通量の増大

0.2 0.4 0.4 1.8
衝突 帆船の来航

交通量の増大

0.3 0.3 0.2 1.7

 

・     海上パレードや港内行事等、通常と異なる状況になる場合のリスクアセスメントに有効である。

・     根要因分析としても、リスク予想分析としても有効である。

What-if分析 活動を小要素に分解し、特定の小要素に問題が発生した場合にどのような結果が発生するかをブレーンストーミングし、それぞれに対して対応策まで示す手法である。

What if 直後の結果 最悪の結果 防護手段 勧告
もし、誰かが船に進入したら? 乗組員に怪我人発生 船が爆破される 進入防止柵設置 定期的な見回り実施

 

・     あらゆるシステム、プロセス、活動に有効である。

・     EMEA、HAZOP等他の精度の高い手法が利用できない場合に主に使用される。

・     チェックリスト分析と同時に使用される場合が多い。

故障形態・影響分析

(Failure Modes and Effects

Analysis(FMEA))

個々のシステムの要素が故障した場合にどのような影響がでるかを詳細に分析し、対応策まで示す手法である。

故障

形態

直後の結果 中間結果 最悪の結果 原因 指標 防護手段 勧告
航路上で事故 怪我人の発生 航路封鎖 経済的損害 見張り不十分 通航隻数/時 警報装置の設置 管制センターの設置

 

・     機械的または電気的なハードウェアシステム(防火設備、舵取機、推進器等)の評価に有効である。

・     機器の整備や検査を計画する際によく使用される。

・     システムの問題部分を発見するための情報収集のために時として使用される。

危険・性能分析

(Hazard and Operability

Analysis(HAZOP))

システムの一部が予定されていた性能からずれを生じた場合を想定してどのような結果が生じるかを詳細に分析し、対応策まで示す手法である。

ずれ 原因 結果 防護手段 勧告
操舵員が居眠りをする 疲労蓄積 衝突事故 3分ごとにアラームを鳴らす 疲労要因となる道環境を是正

 

・     流動体機器、暖房機器等の持続的性能が要求されるシステムの性能分析に有効である。

・     誘導語を工夫すれば人的エラー等による労働安全上のリスク評価にも使用できる。

失敗の木分析

(Fault Tree Analysis(FTA))

演繹的(deductive)アプローチの代表的手法。まず最初に最終的な結果を定義し、それに至るためには、どのような要素がどのような関係で絡んでくるかをAND、ORの記号を用いて詳細に分析する手法である。確率を用いて、リスクを数量化することも可能である。

・     あらゆるリスクアセスメントに有効であるが、多数の要素が複雑に絡み合ったシステムの根本的な故障要因分析に適している。

・     複雑な電気システム、通信システムの分析に使用される。

成り行き図分析

(Event Tree Analysis(ETA))

帰納的(inductive)アプローチの代表的手法。まず最初に個々の故障要素を定義し、それが起きたならば、次に何が起きるかを順次詳細に分析する手法である。確率を用いてリスクを数量化することも可能である。

・     あらゆるリスクアセスメントに有効であるが、すでにある程度の防護策がとられている場合にそれらの防護策が機能しない場合の分析に適している。

・     船舶の航行中の事故分析、火災の拡大分析、有害物質の拡散分析等に使用される。

・     人的信頼性分析(Human Reliability Analysis(HRA)は、人間と信頼性をモデル化するためのETA手法である。

事象因果関係図法

(Event and Causal Factor

Charting)

設備の故障、人的エラー、外部要因等がどのように事故に関係しているかを分析する図法である。事故の根要因の発見に役立ち、根要因の改善勧告の作成にも有効である。

・     あらゆる事故の分析に有効である。

・     特に多数の事象や根要因が関係したシナリオが複雑な事故の分析に有効である。

予備的ハザード分析

(Preliminary Hazard

Analysis(PrHA))

事故の発生につながる可能性のある状況、条件、事象、物体等(ハザード)の発見、そのハザードによって起こされる事故の規模、ハザード除去のための防護手段を大雑把に明らかにするための手法である。

ハザード 原因 主たる影響 事故の重大性 対策
船と桟橋との衝突 重大な環境汚染 桟橋への防舷物の設置
LNG コンプレッサー室の換気故障 火災や爆発へとつながる 警報装置の設置

 

・     システムや活動が開発された初期段階に有効であり、データの蓄積とともに更に詳細なリスクアセスメントが実施されるのが通常である。

・     あらゆる種類のシステムやプロセスのハザード格付けに有効である。

リスク評価手法」への1件のフィードバック

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