英のEU離脱とナショナリズム

本日行われる国民投票の結果によっては、英はEUから離脱する。離脱派の主張はいろいろあるようだが、EUが無駄な規制を作りすぎておりイギリスが独自に規制を作ることができないという主張と、EUからの移民が多すぎて英国民の仕事が奪われ、英国民の税金が彼らに使われ過ぎているという主張の2つが大きな理由のようだ。

EUの過剰規制を嫌うのなら、その気持ちは理解できなくもないが、ほんとうにEUの規制は過剰なのかというのは認識が分かれているようだ。そもそも、その規制作りに英国も参加し、重要な役割を果たしてきたはずなので、あたかも他人が自分たちを過剰に規制していると考えるのも無責任な話である。

EUからの移民が多すぎるというのは、上記と全く逆の発想で、EUが自由を保障しすぎるのが嫌だということになるのだろう。結局のところ、これはアメリカのトランプが支持を集めているのと同じように、根底にあるのはナショナリズムであり、不寛容社会の現れということになると思う。

社会全体のパイが増大しているときは、人々は他人にも寛容になれるが、全体のパイが縮小しているときは不寛容になり、自己中心的になりやすい。これは、考えてみれば当たり前なのかもしれない。人々には他人より自分を優先する権利があるし、正当防衛だと主張されれば、仕方ないですね、ということにもなる。

しかし、考えてみれば、ヒトラーもこんな感じで登場したはずである。第一次大戦後の苦境にあったドイツで「俺たちは優れた民族だ! ユダヤ人が我々の富を奪っている!」などと言って、民主的に拍手喝采登場し、民主的に当時最も民主的といわれたワイマール憲法を停止し、独裁、戦争へと突っ走った。ユダヤ人をスケープゴートにし、大虐殺。ヨーロッパ全土を焦土化。やってることは後から考えれば気が狂ってたとわかるのだろうが、当時は当然だと思ってやってたのだろう。従って、結局のところ、ナショナリズムを煽って、争い事を起こしたところで、自他ともに壊滅的な状況に陥っておしまい、ということになるだけだ。

最近、ほんとうにこのような気違いじみたナショナリズムが世界的多いように思う。日本で問題となっているヘイトスピーチもそのひとつだろうし、アメリカのトランプや、ヨーロッパの極右政党も同じである。ロシアのプーチン大統領もかなりナショナリズムを煽っている。

なお、争い事そのものが悪いのではない。スポーツにしろ、ビジネスにしろ、互いに敬意をもって競争し、切磋琢磨することは、互いの向上のためには必要なものである。しかし、「俺たち国民は優れた国民だ!」など言って他の民族を排他しようとするのは、互いが向上するわけでもなく、自己満足以外の何物でもない。

ナショナリズムは、危機を起こす要因となる「ハザード」である。これは、先日、EU残留派のコックス議員が「Britain First」などと叫ぶ離脱派の何者かに刺されたことからも言える。全員が全員過激な人間とは思わないが、ナショナリズムを唱えて他の民族や反対派を力で排除しようとする者は多いはず。結局のところ、ナショナリストもテロリストもあまり変わりはない。

 

 

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