災害版のMBAでも作ったら?

河野太郎防災相は13日、都内で講演し、災害対応を専門に担う省庁の設置に否定的な見方を示した。「『防災庁』をつくるより、いざというときに必要な人間をオペレーションにスムーズに加える体制が大事だ」と述べた。防災庁を巡っては石破茂地方創生相や自民党の東日本大震災の検証チームが設置すべきだと提言している。(5月13日付 日経新聞より)

情報源: 防災相、「防災庁」設置に否定的

この”防災庁”というアイデア、恐らく、”日本版FEMA”のことではないだろうか。これまでに国会等で提案のあった日本版FEMAのアイデアは、中央への集権的な体制を強化するようなものであったので、それは望ましくない(「日本版FEMAのイメージには多くの誤解がある」参照)。

河野防災相は、その辺りのことをよく理解されているようで、「いざというときに必要な人間をオペレーションにスムーズに加える体制が大事だ」と述べている。災害時に専門家をコンサルタントとして現地に派遣して、現場指揮官を補佐するというアイデアなのかもしれない。そうであれば、この考え方には同感。米国FEMAなどがやっているのはまさしくこのような感じのもの。

つまり、社長のマネジメントや意思決定を補佐するために経営コンサルタントを派遣するようなものだ。災害の場合、社長に相当するのは、市町村長かもしれないし、あるいは、さらにそれよりの小さな単位の区長や地域の長になるかもしれないが、いずれにせよ、災害などはそんなに頻繁にあるわけではないので、災害経験がない現場の長が、マネジメントや意思決定に混乱を生じるはある意味当然だろう。そのような現場に対し、災害時のマネジメントの専門家をコンサルタントとして派遣して、現場のマネジメントそのものを支援する、という仕組みがあってしかるべきだと思う。

現在、支援物資や労働力といった経営資源については、相当量の支援があるように思うが、それらの経営資源のマネジメントそのものを支援する人的資源を派遣する仕組みは今のところない。これらの人は、いわゆるコンサルタントであるので、意思決定そのものを行う権限はない。あくまで意思決定は現場の長が行わなければならない。それは経営コンサルタントと社長の関係と同様である。しかし、このようなマネジメントのコンサルタントが要所要所にいれば、意思決定や外部への支援要請などももっと迅速かつ適切に行えるだろう(当然、そのコンサルタントが優秀であれば、ということになるが・・・)。

なお、そのような優秀なコンサルタントを養成するためには、災害版のMBAを作る必要がある。企業のコンサルタントをするような人は、みんな、外国のビジネススクールで2年くらいは勉強して、MBA(経営学修士号)をとってくる。災害版のビジネススクールが必要だろう。日本にも防災に関する研修コースのようなものはいくつかあるが、いずれも、1日とか数日といった超短期のものが多く、そんなもので十分なはずがない。少なくとも1年から2年はみっちりと勉強しなければならないと思う。ちなみに米国の大学院にはすでにいくつかそのような危機管理スクールがある(例:ジョージ・ワシントン大学など(筆者は10年前にココで学んだ))。

修了にした人に、Master of Incident Management(インシデント・マネジメント修士号)でも発行すればいい。

 

 

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