通常の弾道ミサイルなら朝鮮半島から日本までは数分で到達

3月6日、北朝鮮が再びミサイルの発射実験を実施し、4発中3発が日本のEEZ内海域に落下した。マレーシアでは在マレーシアの北朝鮮大使が国外退去処分とされ、国交断然も視野に入っているようだし、最近特に北朝鮮に対する国際世論が極限状況にまで悪化している中での発射である。もう、北朝鮮には何を言っても無駄だろう。こうなってくると、米軍が北朝鮮へ何らかの軍事オプションを選択する可能性が非常に高くなってくる。そう感じているのは私だけではないだろう。北がVXなどのような化学兵器を保有しているということになれば米軍が軍事介入する理由にはなる。5〜6年前、シリアが化学兵器を保有していることが判明した時、オバマ大統領は「アサドは一線を超えた!」などと言って軍事介入をする意思を固めたが、ロシアがシリアに化学兵器の廃棄を確約させ、あの時は収まった。しかし、今回は北が化学兵器を放棄するとは考えられないし、おまけに核兵器まで保有しようとしている。

そもそも、1994年頃、クリントン政権時代にも米軍が北朝鮮を限定空爆する直前の状態にまで緊張したことがあった。北朝鮮がNPTを遵守せず、極秘に核兵器開発を行っていることが明らかになったからである。このときは、韓国の金泳三大統領(当時)が反対し、結局中止になったが、その金元大統領は、中止要請したことを後日後悔しているとも伝えられている(金泳三元大統領、米国の北朝鮮爆撃計画阻止を後悔…ウィキリークス)。

恐らく、これまでにも度々、米国防省は大統領に対して、軍事的選択肢を提示してきただろうし、トランプのテーブルの上にもそれはのっているだろう。「世界の警察官ややらない」などと主張してきたトランプだが、自己顕示欲が非常に強い彼なら、これを選択し、「これまでのどの大統領も解決できなかった北朝鮮の核問題を俺が力で解決したんだ!」と主張したいだろう。それにより、北朝鮮からの攻撃や押し寄せる難民などを回避したい韓国や中国は、簡単には同意できないだろうが、外国の立場など全く考慮するつもりがないトランプならそれを無視してでも実施してしまう可能性が高い。

「大量破壊兵器を保有している」との理由でイラクへの軍事侵攻を決定した米国である。結局のところ、イラクから大量破壊兵器は発見されなかったのだが、アメリカにとっては事実かどうかは関係なく大義名分があればよい。戦争は米国にとって公共事業のようなもの。日本で必要もない道路をドンドン作るのと同様に、米国は戦争を起こすことによって関連する産業にお金が流れるようにしたい。今回は、特に、ウソを「Alternative Factだ」などと発表し、公然と事実を曲げることを厭わないトランプ政権であり、この政権は公共事業に多額の税金を使うことに非常に積極的でもある。朝鮮半島で最悪の事態が発生するリスクが非常に高まっている(参考:「北朝鮮の核問題、トランプ政権下で最悪の事態も」ロイター)。

もし、そのような事態になった場合、日本も北朝鮮から攻撃される可能性があるが、我々はどうすべきか。J-Alert(全国瞬時警報システム)などは、全く役に立たない。政府がいくら「北朝鮮がミサイルを発射しました!」とSUPERBIRD衛星を経由して各自治体の防災無線で空襲警報を出したとしても、我々にできることなど何もない。一般的な弾道ミサイルの速度は、約28,000Km/hである。ジャンボジェットの速度は約900Km/h。従ってミサイルの速度はジェット機の速度の約30倍。東京とソウルの間をジェット機で飛べば2時間位であるので、単純化して、この2時間の30分の1の時間で日本に到達すると仮定するとその時間は、たったの4分。これでは警報など出されても何もできることはないだろう。地震のように机の下の隠れたとしても、まあ、ほとんど意味のない世界である。

また、仮に逃げる時間が十分あったとしても、各家庭にシェルターがあるわけでもなく、どこに落ちるかピンポイントで示されるわけでもないので、どこかに逃げても意味がない。避難所となっている地域の小学校の体育館と今自分がいる場所と比較してどちらかが安全と言えるような事態ではない。屋内退避指示が出されることもあるようだが、何故に屋内の方が屋外よりも安全と言えるのか。屋内にいれば家の下敷きになるリスクがあるが、屋外にいればそのリスクはない。いずれにせよ、ミサイルの場合、どこにいれば確率的により安全といえるような具体的な証拠や論理が全くない。

ただし、救助機関がJ-Alertによる警報が出された時に直ちに非常体制に入ることができるというメリットは多少ある。しかし、ミサイルは数分で北朝鮮から日本に到達するので、その数分間の間に何が準備できるのかと考えれば、恐らく何もできない。そもそも、これまでに何度も北朝鮮は日本海に向けてミサイルを発射したが、その際、それを探知し、J-Alertで国民に対して空襲警報が出されたことはあるか。日本海に落ちるか、日本の陸上に落ちるかを識別できるのか。日本海で落ちそうもないときに限って警報を出すなどという芸当ができるのか。恐らく、そんなことはできないし、仮にできたとしても警報が出てから着弾までの時間が数分では何もできない。

防衛省のミサイル防衛システムが機能することを祈るばかりだが、結局のところ、地域のレベルでできることは、事後的な対応(Response)によって、被害を最小限にすることだけである。その際に必要となるのは、災害時におけるインシデントマネジメントと全く同じであり、皆で協力し、優先順位を決め、迅速に対応するしかない。

 

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指揮統制通信システム

以前の投稿にも書いたが、災害等のインシデントが発生した場合に最低限確保すべき通信手段は音声通話である。東京電力などのようにお金にゆとりのある企業(それも過去の話かもしれないが)であれば東京本社と各原子力発電所の間に衛星で専用回線を設けてテレビ会議で意思決定するということも可能かもしれないが(実際5年前の事故時には東京と福島との間でテレビ会議を行っていたようである。)、一般的な企業ではBCPのためだけに普段は全く使用する見込みのないような専用回線を確保するためだけに高額な費用を払うことなどできないだろう。

しかし、音声ならビデオ信号に比べて占有する帯域も小さくて済み、コスト的にも安い。実際問題として、テレビ会議で相手の顔が見えないと困るなどということがあるのだろうか。緊張している雰囲気も音声だけで十分伝わるし、図面やその他の画像情報が必要なら、メールやFAXで十分だろう。現場の状況を動画で伝えることは「百聞一見にしかず」というメリットはあるが、テレビ会議は会議室などにカメラが固定されているので、現場の生中継ということを目的にしていない。それに災害の状況などは、自前のカメラマンが現場中継しなくても、テレビ局の中継を見ているだけで多くの場合は十分である。実際、20年前の阪神大震災の後、警察、海保、自衛隊などが撮影するヘリテレ(役所のヘリコプターからのテレビ画像)を首相官邸に接続するためのシステムが巨額の税金を投入して構築されたが、これが役に立ったためしはなく、首相官邸は、NHKや民放の現場中継画像を見ているだけである(東日本大震災の時もそうだった)。

ただし、音声通話でも、伝統的な回線交換式の電話だとつながらないことが多くなる。災害時には、通信需要が急増し、みんな一斉に電話をかけるため、電話交換機を守るために電話会社が通話規制してしまうのである。携帯電話のショートメッセージも同様に携帯電話会社の規制を受けるため、相手にメッセージが到達するまでにかなりの時間がかかる。このような通信規制の影響を受けず、比較的つながりやすいのは普通のインターネットである。インタネットはそもそも軍事通信用にアメリカが開発したプロトコル(IP)を使っているので当然災害には強い。

そこで、音声通話を狭帯域でも通るようにIP化する技術を使う。そして、その音声信号も、通常のVoIP電話のように1対1通話に依存するのではなく、1対n人通話ができる無線機のように使うのである。これはRadio over IP(RoIP)と呼ばれる技術であり、欧米の軍隊や警察などでは、既存のPTT(Push-To-Talk)型無線機のアナログ信号をIP化してIPネットワークに乗せ、さらに指令を伝達するためのシステムもIP化して構築している。無線機とIPベースの指揮統制通信システムを組み合わせることが、緊急時のための通信システムとしては最も効果的である。

http://www.jdc.ne.jp/