災害用電源

災害時における電源確保、これは、古くて新しい問題だが、非常に難しい問題である。通信機器やコンピューター機器を動作させるためには電源がどうしても必要であるし、照明を使うためにも電源が必要である。暖房機器などは、石油やガスなどの電気以外のエネルギー源によっても動作するものが多いが、今はやりの「オール電化」された家などに住んでいれば、電気が止まった時点でオールアウトである。その意味では、オール電化は、CO2を出さないのでエコでいいという論理もあるが、エネルギー源の分散というリスクマネジメントの観点から見ると決して望ましいものではないということになる。考えてみれば、火力発電所で発電された電気を使うのであれば、末端のエンドユーザーこそCO2を出さないかもしれないが、大元の発電所のところでCO2が出ているので、オール電化だからCO2が出ないなどと言うことはできない。

さて、災害用と称してリチウムイオン電池を備えている企業や家庭も多いだろう。東日本大震災後の計画停電を契機に、家庭用リチウムイオン電池の大容量化もすすみ、昼間に太陽光で発電した電気をリチウムイオン電池に蓄えられるようにしたスマートエコハウスに住んでいる人も数多くいる。しかし、リチウムイオン電池の問題点は、満充電にしても自然放電によって、毎月5~10%くらいの電気が蒸発してしまうことである。それならば、と言って常にコンセントに差し込んだままにして充電を続け、100%満充電の状態を維持しようとすると今度はリチウムイオン電池自体の劣化が進み、その寿命が短くなってしまう。このような使い方だと、物にもよるが、2~3年で性能は半減するとみるべきだろう。リチウムイオン電池の寿命を延ばすためには、充電頻度をなるだけ減らすことだが、そうすると、今度はイザというときに満充電の状態ではないために十分な電気が得られないということにもなる。イザと言うときのために、電池の寿命が短くなることを承知の上で、常に満充電の状態にしておくのか、それとも、電池の寿命を延ばすために充電頻度を下げるのか、難しいトレードオフである。電池の寿命が短くなれば、当然その買い替えサイクルが短くなり、買い替えコストが増すことになる。災害は忘れた頃にやってくるものなので、災害用としてリチウムイオン電池を備えていても、一度もその災害用として活躍することなしに、買い替えなければならないことになる可能性が高い。スマホ充電用のリチウムイオン電池くらいなら1万円以下だからよいが、事業用や家庭用の大規模なリチウムイオン電池だと5KWhくらいのもので100万円くらいする。そんなに頻繁に買い替えることができる物ではない。

では、自然放電しない電池は何か。全く自然放電しないという電池は存在しないが、再充電ができないタイプの乾電池(ボタン型電池など単1~単4以外の形の物も含む。)はどれも少ない。自然放電したとしても年間数%である。しかし、乾電池の形をしていても再充電可能なニッケル水素電池などは、一般的に自然放電が大きくなる。それでも、パナソニックのエネループは、改良に改良を加えて、自然放電を年間10%に抑えたらしい(eneloopsサイト参照)。

災害用途には、基本的に、再充電ができないタイプ(これを「一次電池」という。再充電ができるものは「二次電池」と呼ばれる。)の乾電池を備えておくべきだろう。なお、普通の乾電池にもいろいろな種類があるが、長持ちするものから順に並べると:

  1. リチウム電池(注:「リチウム電池」と「リチウムイオン電池」は全く異なる。)[リチウム電池は10年放置しても80%位の容量が残っている。]
  2. アルカリ電池
  3. マンガン電池

なお、どれも保存温度によって自然放電の速度は異なり、一般的には低温で保存した方が、電池は長持ちする。これは低温下では化学反応が抑えられるためだが、逆に言うと、低温下では電池の性能が落ちることにもなる。しかし、この点、リチウム電池は低温特性が優れており、低温下でも使用できる(Panasonicサイト参照)。単三や単四型のリチウム電池は、米エナジャイザー社の特許となっており、他のメーカーからはあまり販売されていないが、パナソニックなどは、そのOEMと思われるものを販売している(その性能比較としてはこのサイトが非常に面白い)。

ところで、乾電池で供給できる電力は微々たるものである。乾電池では動作させることができない機器はどうするのか。その場合、自家発電機を設置することができればそれに越したことはないが、それができない場合には、韓国で開発された空気亜鉛電池「エイターナス」が有効である。これは、密閉された袋から電池を取り出すだけで空気との化学反応が起きて電気が発生するという物である。自然放電はしないし、10年くらいは品質保持できるという。出力は14.4VのDCだが、100Vへのインバーターが付属しているので、100V機器なら何でも使用できる。容量も540Whあり、パソコンが丸一日くらい使える容量がある。災害用としては非常に理想的である。

その他にも、水と塩を入れると発電を始めるWattSattなどもあるが、空気だけで発電するエイターナスの方が、使い勝手はよい。

自家発電機が設置できればそれはそれでよいのだが、自家発電機はそう簡単に持ち運びできるものではないし、地震で建物の崩壊に伴って同時に使用できなくなる可能性も高い。災害用の電源としては、乾電池(リチウム電池)とエイターナスを用意しておき、携帯電話などは乾電池で充電できる乾電池充電器によることとし、大きな電力を必要とするパソコンなどにはエイターナスを使用するようにするとよい。

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災害・非常用電池

今週都内で開催されていた防災関連イベントで紹介されていた電池。ひとつは、空気と触れ合うだけで発電を始めるという「エイターナス」、もうひとつは水と塩を混入させるだけで発電を始めるという「WattSatt」。

エイターナスは、空気が入らないような密閉された袋に普段は保管しておき、使うときにはその袋から出すだけで化学反応が発生し、電気が起きる。出力は12Vだが専用のインバーターを使えば100Vに変換できる。36Wパソコンが15時間程度使用できる容量。一個5万円位。使い捨てなので、一度使ってしまえば新しいのを買うしかない。

情報源:空気亜鉛電池エイターナス

WattSattは、付属の塩を2リットルの水(風呂水でもなんでもよい)に溶かして、本体に流し込めば化学反応が発生し、電気が起きる。出力は5Vのみなので、スマホやタブレットの充電専用というイメージだが、スマホ30台をフル充電できる容量。一個2万円位。やはり使い捨てなので、一度使ってしまえば新しいのを買うしかない。

情報源:マグネシウム空気電池WattSatt

緊急時に携帯や衛星端末などの通信機器を動作させるためにはどうしても電源が必要だが、この種の一次電池を必要量備えておけば、かなりの時間動作させることができる。