国はまた無駄な箱物防災に走るのか?

原子力安全委員会のディスカッションペーパーには、

米国連邦政府等が導入している「インシデント・コマンド・システム (ICS) に相当する、国や自治体の意思決定者が、的確・迅速な防護対策を意思 決定できるシステムの構築が必要である。このため、プラント情報、気象デー タ、モニタリングデータ、避難状況等の様々な情報を意思決定に役立つよう分 析評価し、インテリジェント化する意思決定支援機能が必要である。

と記されている。ICSは上記のような国や自治体の意思決定者の意思決定を支援する仕組みではないことは先日述べたが、「プラント情報、気象デー タ、モニタリングデータ、避難状況等の様々な情報を意思決定に役立つよう分 析評価し、インテリジェント化する意思決定支援機能が必要である。」というフレーズは、また、東日本大震災を理由にあまり役に立たない複雑な情報システムの開発などに税金をつぎ込もうという前触れであろう。このような情報システムはあれば確かにベターである。しかし、私の経験から言わせてもらうと、防災用の情報システムというのは普段から使っているわけではないので、いざというとき使い方がわからない、そして場合によってはそんなものがあったのか、などどあることすら忘れられているものが大半(話題になった放射能の拡散予測装置「SPEEDI」など)である。いずれにせよ、高度な情報システムに過度に依存してしまうと、災害で通信が遮断されたり、電気が停電しただけで役に立たなくなる。これはそもそも危機管理の基礎ができていないということである。基本は、このような情報システムがあればベターだが、なくても意思決定できる、という仕組みを作っておくことだろう。

情報は災害現場・事故現場に集中している。従って、現場の状況がよくわかる地点で意思決定が行われれば、複雑な情報システムがなくても意思決定できる。人が走って状況を見てきて、指揮官に報告すればいい。それだけのことだ。自治体や国は、このような現場指揮官の作業を支援するだけでよい。現場指揮官に対してああしろ、こうしろと命令するのは自治体や国の仕事ではない。今回の福島第一原発事故は、中央で現場のマイクロマネジメントまでするという意思決定手法が非現実的であり間違っていることを証明したはずだ。恐らく世界的に見ても、災害時に中央がこんなに過干渉する国はあまりないだろう。日本だけである。少なくとも欧米はこのような仕組みはとっていない。(ロシアあたりは日本と同じかもしれないが・・)

米国などで導入されているICSは、現場で意思決定するための仕組みである。日本も大幅な考え方の変更、言い換えればプラットフォームの修正を図る時期に来ているのではないだろうか。このまま関東大震災や東南海地震が発生したら、恐らく意思決定不全が発生し、被害は不必要なまでに拡大する。

安全庁の設置、もっと迅速にできないのか?

日本は各行政機関の任務をこと細かく組織法に書くので、新組織である安全庁の設置も大変でしょうね。外国ではもっと大まかなことしか決めないことが多いのですが、こうやってこと細かく決めること自体が縦割りセクショナリズムの根源にもなっている。「これは俺たちの仕事じゃない」とか「これは俺たちの仕事だ」とか消極的権限争いのこともあれば積極的権限争いのこともある。この手法自体も今回見直したらよかったのにと思う。とにかく「今までと同じやり方で」などと言っていたら臨機応変に対応することはできないのですが。
細野・原発事故担当相:原発寿命、個別に判断 安全庁の全体像、年内に – 毎日jp(毎日新聞).

リスクマネジメント

リスクベース意思決定手法(Risk-Based Decision Making(RBDM))

(出展:United States Coast Guard RBDM Guidelines)

意思決定のプロセスの概要


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