<外国人犯罪デマ>被災地半数聞き86%信じる (河北新報) 

東日本大震災直後に宮城県内で流れた「被災地で外国人犯罪が頻発している」というデマ – (河北新報)

情報源: <外国人犯罪デマ>被災地半数聞き86%信じる (河北新報)

東日本大震災時、「外国人が犯罪を犯している」というデマが流れ、8割以上の人が信じたのだという。過去にも関東大震災の時に、朝鮮人が井戸に毒を入れたので井戸水を飲むな、などというデマが広がり、朝鮮人への暴行などが多数発生したという事実を多くの人は知らなかったのだろうか。自分達が危機的な状態になったときに人は人種差別をして、「悪いのはあの連中だ」などとレッテルを貼り、自分達を正当化する。

考えてみれば、アメリカでトランプのような人種差別的な人物が大統領にまでなることができたのも、彼のデマを多くの人が信じたからであり、同じような理由によるものだろう。ヒトラーがユダヤ人を悪者にしたのと全く同じである。危機的状況下では、スケープゴートが作られやすい。

「歴史は繰り返す」という。同じような愚かな行為を繰り返さないためには、多くの人が歴史を正しく勉強する必要がある。デマは必ず発生するので、つまらないデマを信じさせないようにするためには、教育しかない。

見せかけとしての訓練では不十分

NHKなどでの報道を見ていると、相模原での事件を受けて全国の障害者施設で不審者に対応する訓練が始まっているようだ。確か2001年に発生した大阪の池田小学校での事件の後もそうだった。多くの小学校で警察官の指導を受けながら不審者対応訓練を実施していたように記憶している。訓練を実施することは必要なのだが、問題はその想定とシナリオ、つまり、今回は障害者施設、10年前は小学校というように、事件と同じ施設が狙われているというシナリオに基づく訓練ばかりが行われていることである。日本では、何か事件や事故があると、あまり意味がないということがわかっていても、見せかけを作るためのパフォーマンスとしての訓練が行われることが非常に多い。

正直言って、今回の犯人が無罪放免されて留置場から出てくることでもない限り、全く同じパターンで狙われるなどという確率は限りなくゼロに近い。池田小事件のあと、同じような事件が小学校で発生しただろうか? 全くゼロだったはずである。今回の犯罪は、過激派集団による組織的な犯罪ではなく、いわゆる「ローンウルフ型憎悪犯罪」である。これが組織的なものであるならば、同様なシナリオが発生する可能性は確かに高いが、今回のパターンは全くの個人によるものであって理由もターゲットも独特なものであるので、全く同じパターンの発生確率は極めて低い。

ただし、今回の事件が、人々、特に障害者施設で働いている方々のリスクパーセプション(リスク認識)に変化を与えたことは間違いない。従って、障害者施設の方々の不安感が高まるのは当然であり、何ら不思議なことではない。しかし、実際には、その犯人(リスク源)がすでに逮捕、すなわち除去されている。必要以上に障害者施設の方々の不安を煽るのではなく、障害者施設の方々に対する説得力のあるリスクコミュニケーションが実施されれば、障害者施設の方々のリスク認識、言い換えれば不安を和らげることはできるはずである。

ところで、今回の事件と同じシナリオが発生する確率は極めて低いのだが、他方、日本でも、無差別殺傷事件は多発している。右の表は、7月27日付日経新聞電子版からの引用であるが、同記事にもあるように、これらは、多かれ少なかれ、社会に対して何らかの反感を持つ「ローンウルフ」が過激化した「ヘイトクライム(憎悪犯罪)」である。欧米のテロと違うのは、宗教的なものでも組織的なものでもなく(オウム事件を除く)、銃を使ったものでもないということぐらいである。表から見ても、同じシナリオで発生しているものはないことがわかる。それは、それぞれのリスク源である行為者本人が逮捕されているからである。

このように全てパターンが異なる場合どうすべきか。これは「オールハザード」と呼ばれる対応手段を準備しておくしかないということになる。「ハザード」とか「リスク源」とか「脅威」など、いろいろな言葉が氾濫しているのだが、防災分野ではリスク源をハザードと呼び、セキュリティの分野などではそれを脅威と呼んでいるだけであって、いずれも、好ましくない結果をもたらしかねない根源的な要因である。

今回のような犯罪の場合はハザードと呼ぶよりも、脅威と呼んだ方がよいのかもしれない。その場合、どのような脅威に対しても効果的に対応する手段ということになる。そんなことが可能なのかと瞬間的には誰もが思うだろう。しかし、アメリカなどで発達している「オールハザード」という考え方は、何のことはない、お客様からのオーダーメードによる特注品の製作工程と同じである。トヨタのジャストインタイム工程と同じことだとも言える。(注:「オールハザード」という考え方は、全てのシナリオを詳細に事前に予測して災害の発生を予防するという考え方ではない。逆に予測しきれなかったシナリオに対して事後的に迅速かつ柔軟に対応して被害を最小化できるよう要所要所を標準化したマネジメントシステムである。)

ある犯罪者は、銃を持っているかもしれないし、他の犯罪者は包丁かもしれない。ある犯罪は、複数人のグループによるものかもしれないし、他はローンウルフかもしれない。銃を持っている犯罪者にナイフで対抗するのは、B29に竹やりで対抗しようとするようなものだし、組織的な犯罪にひとりで立ち向かうのもアメリカ映画に出てくるヒーローのような力を持っている者でなければ無謀である。つまり、個々の脅威に対応するために必要な道具や人数、組織、作戦(これらを総称して「資源」と呼ぶ。)は、全てのケースにおいて異なるということである。

ではどうするべきか。答えは、資源と機能、資源とプロセスを完全に分けたマニュアル(「インシデントマネジメントマニュアル」)を作っておき、そのマニュアルに習熟しておくということである。しかし、実は、このように分けて考えるということが意外と難しい。往々にして、我々の作るマニュアルというのは、「誰が何をする」、「何によってナントカする」、「どの組織が何をする」、「次の仕事は誰がする」などとように資源と機能、資源とプロセスを明確に紐づけて固定的にしてしまうのだが、これが諸悪の根源である。重要なことは、目的を達成するために必要な資源を柔軟に選択することである。銃を持った侵入者がいたとし、目の前にナイフしかなければ、無謀な行動をせず、外部に支援を要請する方がよい。ではどのように外部に支援を要請すべきか、このようなプロセスを明確にしておけばいざというときの現場の混乱はある程度避けられる。

どのような脅威が発生したのか、まず、把握する(敵は何人、敵の武器は何、など)。それに対応するための資源は手元にあるのか、なければどこにどうやって支援を求めるか、現場ではどのような立場の人(誰がという特定の人物名ではなく、「当直長」「その場に居合わせた人の中で最上位の人」などのように柔軟性を持たせておく)が指揮者になって当座の意思決定をするのか、などをあらかじめ決めておき、資源選択の訓練や支援要請の訓練をしておく、そして、このようなマニュアル作成と訓練を今回事件のあった障害者施設だけではなく、様々な組織で実施しておくことが重要だと思われる。なお、オールハザードの考え方を徹底し、作り方さえ間違えなければ、今回のような犯罪リスクのみならず、災害リスクなどにも対応できるはずである。

日本では、「訓練をやりました」という「アリバエ作りのための訓練」、言い換えれば「見せかけ」の訓練が多すぎる。日本は基本的に村社会文化に根差しているため、みんなの和を維持することに過剰に神経を使い、喧々諤々と意見を述べながら訓練や議論を繰り返すのは難しいのかもしれない。必要なのは現実を重視し、熱のこもった議論をしながらマニュアルを作り、その内容の確認と改善のために訓練を実施することなのだが・・・。

 

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誤解の定理(スタン・カプラン)

最近、スタン・カプラン(Stan Kaplan)の論文を読み返していたが、コミュニケーションに関する面白い定理を述べていたので、ここに引用しておきたい。

  • Theorem 1: 50% of the problems in the world result from people using the same words with different meanings.
  • Theorem 2: The other 50% comes from people using different words with the same meaning.
  • 定理1:50%の問題は、同じ単語を異なる意味合いで使用することにより生じる。
  • 定理2:残りの50%の問題は、同じ意味合いで異なる単語を使用することにより生じる。

日本における危機管理の問題は、正にこの定理が当てはまっている。各研究者が欧米のカタカナ語をそれぞれおかしな日本語に訳すことによる問題が極めて大きい。

品用元:Stan Kaplan, “Word of Risk Analysis”, Risk Analysis, Vol. 17, No. 4. 1997

TPP問題:実態のないリスクが過度に増幅されているだけ

世間ではTPPに参加するか否かで世論が二分されているが、私から見るとこれも原発放射能に対する風評被害と全く同じで、実態のない危険に対する過度な不安が無秩序に増幅された結果ではないかと思っている。そもそも今現在TPPという条約なり協定が存在していてそれを我が国が批准するか否かでもめているのではなく、貿易自由化に関する多国間協議に加わるか否かというだけでこんな馬鹿げた議論になっているということを認識する必要がある。 続きを読む

電気料金か税金か?

官房長官や経産大臣は、「できるだけ電気料金への転嫁を少なくする。国民負担の極小化に努めていきたい」 などと述べる。しかし、誰もが思っているとおり、東電に様々な賠償金の負担を求めるなら電気料金の値上げは不可避だろう。電気料金の値上げを避けるため政府が支援するということになれば、それは税金ということになる。負担配分に多少の違いは出てくるが、どちらにしろ国民負担であることには変わりない。東電の負担となれば関東地方の人、企業の負担となり、国税ということになればもっと浅く広い負担となる。違いはそうゆうことであろう。

今、政府のすべきことは、この辺の違いをわかりやすく説明し、国民的合意を形成することではないか? きれいごと言っていてもこの問題は前進しない。もう、これは一種の復興税みたいなもんだ。

放射線量の簡易計算ツールを発見しました

放射線量が連日報道されてますが、これらの放射線を1年間浴び続けた場合や放射線を帯びた食べ物を食べ続けた場合、1年間に被爆する量に換算するとどうなるかを自動的に計算してくれるフリーソフトがありました。よくできていると思います。

放射線量簡易計算ツール Radibob

参考:ベクレルについて

リスクマネジメント

リスクベース意思決定手法(Risk-Based Decision Making(RBDM))

(出展:United States Coast Guard RBDM Guidelines)

意思決定のプロセスの概要


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