誤解の定理(スタン・カプラン)

最近、スタン・カプラン(Stan Kaplan)の論文を読み返していたが、コミュニケーションに関する面白い定理を述べていたので、ここに引用しておきたい。

  • Theorem 1: 50% of the problems in the world result from people using the same words with different meanings.
  • Theorem 2: The other 50% comes from people using different words with the same meaning.
  • 定理1:50%の問題は、同じ単語を異なる意味合いで使用することにより生じる。
  • 定理2:残りの50%の問題は、同じ意味合いで異なる単語を使用することにより生じる。

日本における危機管理の問題は、正にこの定理が当てはまっている。各研究者が欧米のカタカナ語をそれぞれおかしな日本語に訳すことによる問題が極めて大きい。

品用元:Stan Kaplan, “Word of Risk Analysis”, Risk Analysis, Vol. 17, No. 4. 1997

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舛添都知事の対応とプロスペクト理論

投資の世界ではよく知られているプロスペクト理論だが、これを応用した心理会計によってクライシス・コミュニケーションの在り方を説明できる。

人々の価値関数が下の図のようになると仮定すると、人々にとって利益になるような情報は、V(X1)+V(X2) > V(X1+X2)であるため、まとめて提示するよりも分割して提示した方がよいということになる。従って、サービスなどは、一度にもらうよりも、分割して何度かにわけてもらった方が一般的には満足度が高くなる。これに対し、人々に対して不満足度を増大させるような内容ならばこれと逆で、小刻みに出すよりも一度に出す方が、不満足感は小さくなる。

これを応用すると災害時などの広報や企業などで不祥事が発生したときの広報は、まず、あらゆる事実を集めて、迅速に全ての情報を公開してしまった方が、人々の不満足度、言い換えれば不安を小さくするためにはよいということが説明できる。自ら発表するより前に、マスコミなどからバラバラに様々な情報が出てくるようになると人々の不満足度がどんどん増大してしまうためである。新たな事実が追加的に発覚した場合にも、その都度、全てを一度に急いで広報してしまう必要がある。

 

プロスペクト理論

ところで最近話題の東京都の舛添知事だが、彼の情報の出し方をどう評価すべきか。心理会計では、人々に対して信用を失わせるような情報ならば、小刻みに出すよりも一度に出す方が、不満足感は小さくなる。しかし舛添知事の場合、不祥事が発覚以降、次から次へと知事の信用を失わせるような情報がマスコミに出てしまった。マスコミから出てくる前にご自身で至急調査し、ご自身ですべてを一度に発表していれば、人々の不満足感はかなり小さかったに違いない。

そして、未だに「厳しい第三者の目で」などと述べられたその情報が何一つ出てこない。都民は、第3者による調査結果ではなく、舛添さんの口から情報をとにかく欲している。従って、調査結果を待つのではなく、ご自分の口でとにかく急いで発表した方が都民の不満足感は小さくなるのではなかろうか。