簡単に破られる国際約束

最近の国際情勢を見ていると、いとも簡単に国家間の約束事(条約、協定、覚書その他さまざまな形態を含む。)が反故にされる情景をよく見る。約束破りのトップは、当然、アメリカのトランプ。就任するや否やTPPやパリ協定から一方的に脱退し、イランに関する核合意からも一方的に離脱した。日本もIWCから一方的に脱退し、商業捕鯨を始めた。そして、韓国。韓国の場合は、約束破り(65年日韓請求権協定違反)をしたのが同国の行政ではなく司法(最高裁)だという点が興味深い。本来、国際協定の解釈権は、当事国の片方の裁判所にはない。つまり裁判管轄権がない案件なのだが、それにも関わらず、韓国の国内世論に同調した裁判官らが、一方的に日韓請求権協定を無視にして戦時中の徴用を巡って日本企業に対して損害賠償を命じた。戦後80年近くもたった今である。2国間協定の解釈に紛争が生じた場合に片方の国の裁判所が一方的に判断したらどうなるか。そんな不公平な判決に納得する人がいるわけないだろう。韓国の司法試験では国際法について学ぶ必要がないから知らないだけなのか、知っていて意図的に大衆迎合的な判決を出したのか。いずれにせよ、国交断絶の事態まで覚悟の上でのことなのかどうか、一度、韓国裁判官に聞いてみたい(日本の裁判官も世間知らずの人が多いが、韓国裁判官も同じような田舎者なのではないだろうか。)。

なお、約束事が破られるということ自体は、そんなに珍しいことではない。民間企業だって、相手企業に訴えられることを承知の上で、契約を破るということはよくある。破って、損害賠償を支払ったとしても、それを上回る利益が見込めるなら、破ったほうがよい、という計算である。破られた方は、当然、感情的には不快だろうし、企業間の関係は断絶という事態になるだろう。それでも、経済合理性という観点からは、このような判断は時として下される。欧米では頻繁にあることである。従って、もし、韓国の裁判官が、国交断絶のリスクまで承知の上で意思決定したというなら、それはそれで合理的だと思うが、そのようなリスクを背負い込む権限が裁判所にあるわけないので、結局はバカで世界知らずの韓国法律屋が国家間の関係を壊したということになる。

約束事を守らせるということは、国家間、企業間、個人間等のレベルを問わず、非常に難しいことである。そこで、通常は破ったときに何らかのペナルティーを与えるように約束事を決めておく。国の法律というのも約束事の一つだが、これを破れば、罰金や刑務所行きというペナルティーがある。民事契約なら損害賠償というペナルティーがあり、それを担保するために裁判所という仕組みがある。しかし、国家間の約束事ということになると、ペナルティーを与える仕組みがなかなか機能しない。要するにグローバルガバメントというものが存在しないので、一国の中での仕組みと同じようにはいかないのである。国際連合があるではないかという人もいるが、あれは、所詮、各国が集まって約束事を議論する場所であって、それを破った国を処罰する機能はない。国連の傘下に裁判所的な機関として国際司法裁判所やWTOも一応あるが、これも、国内裁判所とは異なり、何らかの強制力を発揮できるものではない。所詮、どちらの言い分が最もか、ということに対して一応の見解を示す、という機関に過ぎない。国際司法裁判所の判決が出た後でも、その判決に従わない国もいる。そのような国を国際的に非難することはできるが刑務所に送るわけにはいかない。

だから、各国の為政者(時には司法も)は、何らかの屁理屈をつけて、平然と約束事を破る。しかし、それを公正に裁いて、ペナルティーを課すということが難しい。せいぜい、今、日本がやっているような輸出規制や経済制裁で対抗することができるくらいである。武力によって解決を図るという手段は、現在の国連憲章ではそもそも認められていない。武力を使っていいのは、自衛のためだけである。

これまでは、世界の警察官を自負するアメリカが、一応は自ら国際法を尊重し、遵守し、それを破る国には、アメリカがあたかも世界政府のように行動して、ペナルティーを課してきた。そこに一定の国家間の秩序と安定が存在していたように思う。しかし、トランプは、気に入らなければ自ら約束事を簡単に破るし、その上、「世界の警察官をしても儲からないのでもうやりません!」という。

簡単に国際約束が破られる世界になりつつあるように思える。この先、安易な武力行使をする国だって出てくるだろう。今後の世界秩序の維持をどのように確保するのか。日韓でチッポケな喧嘩をやって喜んでいるような場合ではないと思う。

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