♯長時間労働

今日のNHKスペシャルのテーマは長時間労働。今年問題になった電通の過労自殺がキーになっているのだろうが、この問題は、決して新しい話ではない。もう、半世紀以上も前から続いている話であり、ひょっとしたら、「月月火水木金金」などという歌があった位だから、戦前からあったのではないかとも推定できる。

NHKではいろいろな原因を推測していたが、私は「付き合い残業」の風習がまだ残っているのではないかと思っている。1980年代、まだ、日本がイケイケドンドンだった頃、テレビで流行った宣伝はリゲインの「24時間働けますか? ビジネスマーン、ビジネスマーン、ジャパニーズビジネスマーン」だった。カラオケで皆喜んでリゲインのテーマを歌うニッポン、そんな、日本を取材したアメリカのTIMES紙が日本の特集を掲載し、その特徴として「Tsukiai Zangyo」と、わざわざ、ローマ字にして、外国の読者に紹介していたのを私ははっきりと覚えている。要するに必要もないのに、上司が帰らないから帰れない、周りが帰らないから帰れない、といった仕事の需要とは関係のないところで、残業している人が多いということだった。私はその頃、霞が関で役人をしていたが、そんな批判を受けて、「ノー残業デー」などというものが作られ、毎週水曜になると、「今日は早期退庁日です。皆さん、早期に仕事を終えて帰りましょう。上司の皆さんは積極的に帰りましょう。」という放送が入った。しかし、そんな日を設けても、何も変わらず、裏残業する人は大勢おり、遅くまでやるのがカッコいい、やってる気分になる、上司からの評価がよくなる、などと非常にくだらない動機に基づいている人が多かったように記憶している。

今日のNHKは、なぜ、外国の状況と比較しないのだろうか、と思うほど全く外国との比較がなかったのが残念だが、私が日本の状況をバカバカしいと思うようになったのは、今から20年位まえにロンドンにある国際機関で働いてからである。彼らは、基本的に残業などは誰もしない。国際会議の開催中など、年に何回か、徹夜で働かざる得ないことはあったが、それはほんとに時たまというだけであって、日本の役所などのように常態化はしていなかった。どう見ても、職員一人ひとりの能力は日本の役人よりも遥かに高く、専門家として、仕事が早く、意思決定も早い。一人ひとりがプロだったからである。そんな経験をして、日本に帰った後に日本の役所で働いてみると、仕事の能率は低く、ほとんどの人が、書類を右から左へと転がしているだけ、誰も何も意思決定しようとせず、意思決定に時間がかかり、大したことをしていないくせに、「忙しい忙しい」という者ばかりで、毎年毎年、増員要求を出して、組織をドンドン膨張させていくのが仕事と勘違いしている愚かな組織に見えてしまった。私は非常に直感的だが「日本の役所は職員の3分の2を首にしても成り立つ。」と当時は思った。3分の2は今考えると少し大げさかもしれないが、役人の数を半分くらいにしたほうが、かえって仕事は楽になり、能率もスピードも上がる、と今も思っている。

欧米の企業や役所の人は、付き合いで残業などはしないし、定時に帰って自分の時間を楽しもうと普通の人は考える。幹部職員になると朝から晩まで仕事で飛び回る、ということはあるが、末端の人では考えられないように思う。だから、前述したようにTIMES紙が奇妙な習慣としてこの問題をとりあげたのだろう。彼らは、「お客様は神様だ」とも思っていないし、「今の会社で生き残ること絶対だ」とも思っていないだろう。文化の違いだといってしまえばそれまでだが、1980年代のイケイケドンドン世代が今企業の幹部になっている頃だから、なかなか、変わることができないのだろう。思うに、「お客様第一主義(Customer First)」は、長期関係を築く上での経営学上の真理であり、グローバルスタンダードだが、「お客様は神様」と考えてしまうのは、日本だけではなかろうか。お客様は絶対ではない。時には自分の利益に反するお客様とは縁を切ることも必要だろう。しかし、それが日本社会ではやりにくい、というのがあるのかもしれない。

お客様にしろ、役所の中の他の部署や上司にしろ、とにかく、誰か別の人間の不当な要求に無理に応えようとするところにそもそもの誤りがあるように思う。個人主義の強い外国と異なり、集団主義が強い日本では、自分の所属集団に過度に依存しすぎるのではないだろうか。

 

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