緊急事態法の制定を求む

今回の東日本大震災でも、政府の規制が障害となり、支援がスムーズに行かない事例が多数報告されている。私が、TV等のマスコミで知った事例だけでも、「食料の増産を要求されているが各種シールの添付など規制を順守させられ時間がかかる。(食品メーカー)」、「民間のヘリコプターは安全規制上支援物資を空輸できない。」など、多数ある。また、3月22日のTime誌のネット記事も、「非常時には非常手段でのぞまなければならないにも関わらず日本の役所の官僚制(Red Tape)のため規制が緩和されず支援が遅れた。例えば、NYK(日本郵船)がヘリコプターを同社のコンテナ船に着船させ緊急物資を船から輸送したいと提案したら安全上問題ありとして拒否され、また、外国人医師が緊急医療のためボランティアを申し出たら日本の医師免許がないからと拒否された。」と指摘する。

One major bottleneck has been Japan’s fondness for red tape. “In special times, you have to do things in a special way,” says Kensuke Kobayashi, an IBM employee in Tokyo who has tried to organize relief efforts to Tohoku from the Japanese capital. “But in Japan, there is a legal wall that stops everything.” Japanese shipping company NYK offered to provide a container ship for helicopters to land on when ferrying in relief supplies to coastal areas. But the government rejected the offer because the NYK shipmates lacked the proper licenses to help with such work. After some wrangling, volunteer foreign doctors were told that because they didn’t have Japanese medical licenses, they could conduct only the “minimum necessary medical procedures” in the disaster zone.

Some medicine donations from overseas haven’t reached the many elderly suffering in the earthquake’s aftermath because Japanese regulatory agencies have not yet given the drugs approval. Local logistics companies have complained — off the record, for fear of angering the bureaucrats whom they depend on for future licensing — of days-long waits for permission from the central government to deliver donated goods. Only when their trucks get the magic pass can they start moving toward Tohoku. Until then, the boxes of relief goods, some of which were donated just hours after the earthquake and tsunami hit, sit in Tokyo warehouses.

私は衛星通信関連の仕事をしているので、特に衛星携帯の免許関係を懸念したが、総務省はITUからインマルサット、スラーヤ、イリジウムなどの衛星携帯を多数緊急輸送してもらったという。このうち、スラーヤなどは日本の電波法上の制度がないため、免許がおりないはずだが、総務省は、非常事態だとして、使用させているらしい。このこと自体は柔軟な対応で評価したいが、未だに制度上の根拠が見当たらず、担当者は悩んでいるらしい。

組織関係を見ても、原発事故対応に関係省庁が一同に会して対応している様子は伺えず、原子力保安院、東電、内閣官房、消防、防衛庁などがそれぞれ個別に記者会見などを開き、組織の宣伝的な会見ばかりが目に映る。こんな事態になれば、関係省庁のトップがどこかに集まる統合司令部みたいなものを作り、記者会見も共同で行うのが海外では常である。木っ端役人と話していても何も決められない。緊急時の意思決定は徹底したトップダウンでなければならないのだが、その気配がない。つまり、通常時と同じ仕組の中で業務が行われているということである。

こうゆう状況は、今、始まったことではなく、阪神大震災やその他の災害時でも全く同じであった。私は、この根本的な原因は、緊急事態法がないからではないかと思う。米国などでは緊急事態宣言(State of Emergency)が出されると、通常の法制度にとらわれない柔軟な対応が許される仕組みになっているが、日本には全くその仕組みがない。日本でもこうゆう基本法的な仕組みを一つ作っておけば、もっと柔軟に対応できるのではないだろうか。例えば、

  1. 総理大臣または各県知事が緊急事態宣言を出した場合には、各大臣または各大臣から権限を委任された現場指揮官の判断で所管する規制の適用を一定期間包括的に停止することができるようにする。(通常時と緊急時ではプライオリティーが異なる)
  2. 各大臣の権限などを被災現場の指揮官に柔軟に委任できるようにする。(現場へ意思決定権限をシフトし、意思決定を迅速化する)
  3. 緊急時における組織を柔軟に編成できるようにする。(縦割り組織の排除)

Time紙も述べているが、非常時には非常の手段でのぞむ、ということが基本中の基ではないだろうか。不幸なことに日本は非常時にも通常時の手段でのぞんできた。または、非常にはこうのぞむ、って予め全てマニュアル化する方法でのぞんできた。しかし、全ての多種多様な非常事態をマニュアル化することなど不可能であるし、また、そのマニュアルを覚えている人などたぶんいない。非常時にマニュアルは絶対に機能しない。非常時にはマニュアルなしで柔軟に対処できる仕組みを作っておくことこそが重要なのではないだろうか。

PS: 現在進行中の災害対応については、3月11日に遡って適用されるような特別措置法みたいなものを作って、役所が柔軟に規制にとらわれずに対処できる仕組みを作っておいてもよいのではないだろうか。すでに上に述べた総務省などのように超法規的な対応をやってしまっている役所もいくつかあるであろう。ありがたいことではあるが、担当者は根拠を見いだせず苦労しているのではないだろうか。役人の行動動機は、「あとで文句言われないように行動する」が中心にある。今回、柔軟な対応をとってしまった役所の立場が逆に悪くならないよう配慮することも必要な気がする。

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緊急事態法の制定を求む」への2件のフィードバック

  1. ピンバック: 初期対応の遅れが致命傷の原因(福島原発) « Safeyon

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